【本記事を読んでほしい方】
- 大切なラケットを壊してしまった
- ラケットが修理可能か知りたい
- 修理してみたい
結論から言うとラケットの修理は可能です。
しかし修理をして使っているという声をあまり聞いたことがありません。
- ラケット自体の値段が高くないから新しいのを購入すればいいと思ってしまう
- 需要がなく儲からない?修理してくれる人が近くにいない
こんな理由からなのでしょうか。
本来ならメーカーで修理受付を行ってもいいような気がしますが、そのようなサービスも今の所無いようです。
そこで今回はラケットの修理が可能なのか、実際チャレンジしてみることにしました。
【テニス・バドミントン・ソフトテニス】ラケットの修理は可能か?
ラケット自体の値段が高くないから新しいのを購入すればいいと思ってしまう
ラケットの性能はどんどんUPしていて、素材だけ見てもカーボンはもちろんその複合素材も実際高級なものを使われています。
しかし販売価格は品質に見合ったものというよりは、購買層の顔色を窺った価格設定となっているような気がします。
上位モデルの高いものでも20,000円〜30,000円ぐらいの設定は正直安いのではないかと個人的に思います。 (もちろん安い方はうれしいですよ)
そもそもラケットを修理して使っているよなんて聞いたことがありますか?
あるとしても、修理代が諸々で10,000円ぐらいするとしたら新品購入と天秤にかけた時どちらにしますか?
よほど思い入れのあるものでない限りは、新品を購入する方が多いのではないでしょうか。
需要がなく儲からない?修理してくれる人が近くにいない
今回修理してみて思ったのは、材料はともかく手間がとてもかかるということです。
設備を整えてスピーディーに作業したとしても、ラケット1本に付き丸一日はかかります。
そこで一日10,000円の利益が欲しいと仮定して単純に計算してみました。
修理代は1本5,000円貰えるとして、材料費が半分の2,500円とします。
1本修理した場合の利益は、 5,000円-2,500円=2,500円 ですね。
目標の一日10,000円の利益を達成するには
10,000円÷2,500円(1本)=4本
よって一日4本の修理をしないと10,000円の利益にならないということになります。
たしかに段取りをうまく考えれば4本修理することは可能だと思います。
利益を追求するあまり修理本数を無理やり増やしたり、材料をケチったり、手抜きになってってしまう光景を想像してしまいます。
では、修理代を倍の10,000円にしてみてはどうでしょう。
一日2本修理をすれば目標は達成できますが、依頼してくれる人はいるのでしょうか?
そもそも一日10,000円の利益だけでは生活できませんよね、、、
ラケットの修理を実際やってみた
さてさて本題のラケット修理をやってみました。
時間があるときに少しずつやってますので、1週間ほどかかりました。
凝縮すると丸一日というところでしょうか。
順を追って説明します。
全体の状況を把握する
どんな力がラケットに働いて破損したのか判断するために持ち主から壊れたときの状況を詳しく聞きます。
現状のラケットの状態を観察し破損状況を大まかに把握します。
ガットを切って全体の歪みが無いかチェックする
ガットを切ることによって本来の形状に戻るのか観察する。
今回は幸運なことにガットが張られている状態では捻じれて変形していたものが、切り取って外すことで初期の形状をほぼ取り戻していました。
本当であれば、破損した時点で素早くガットを切ってテンションが掛からない状態にすることが望ましいと思います。
力が加えられていると亀裂などが進んでしまうことがあるためです。
破損状況を細かく見る
グロメットを外し亀裂の入っている個所を細かく観察して破損状況を把握します。
仮の接着
今回は完全に折れて切断されているわけではなく、一部繋がっていましたので内部に樹脂を流し込み仮に接着します。
使用する樹脂は、スイス製 低粘度エポキシLY5052 というF1レーシングカーにも使われる超硬質のものです。
低粘度のため細部に浸透しやすく、熱処理も加えておりますので硬化後はカッチカチです。
破損個所の研磨
ガットのテンションや打球の時は想像をはるかに超えた力が働いてきますので、 接着だけでは不十分です。
一度内部の繊維の表面を露出させるために破損個所周辺を丁寧に削ります。
カーボン等の素材で補強
切断されてしまった繊維同士を補強して繋ぎ直すためにカーボン繊維をのせて、 仮の接着の時と同じようにエポキシLY5052を浸透させて硬化させます。
始めは縦の方向のみのカーボン繊維で繋ぎます。
出来るだけ薄く圧着させます。
マニアックな話になりますが、使用するカーボンロービングは高弾性のM40です。
半分ほど硬化したところで今度は斜め方向の強度も上げるために平織の繊維を斜めに貼り付け圧着させます。
仕上げ
最後に元通りに穴を開けなおして新品のグロメットを装着して完成です。
ちなみに修理前との重量差は5g以内です。
また本体と修理箇所の段差はありません。
自分で言うのもなんですが美しいw
最後に
今回修理するにあたって事前に修理サービスを行っているお店をネットで探したところ数軒ありました。
修理代金はおおよそ5,000円ぐらいからで、修理専門というよりはスポーツ店でストリングサービスを行いながら修理サービスを行っているというスタイルのようです。
依頼される方もそれなりに多くいるようで、物を大切にする心がまだまだ廃れていないところにちょっとホッとしています。
ただし、公式戦では修理品の使用は改造品にあたるため、および安全の観点から使用禁止という記述も見かけました。
そう言われると新しいのを買うしか無いかと思ってしまうのも致し方ないのかもしれません。
何れにしても物を大切にする気持ちはプレー技術の向上につながります。
プレゼントされたものや特別に愛着のあるものなどがもし壊れてしまった場合は、このような修理サービスの利用も一度考えてみてはいかがでしょうか。